「ボーナスは払うべきか」「いつ払うか」は、国ごとに答えが違います。法律で義務のもの、法律上は任意でも慣習として期待されるもの、契約書の書き方で義務になるものを分けて整理しておくと、年間の人件費の見積りがぶれません。
3カ国の比較:何が義務で、何が慣習か
| 🇵🇭 フィリピン | 🇻🇳 ベトナム | 🇮🇳 インド | |
|---|---|---|---|
| 代表的な制度 | 13ヶ月給与 | テト賞与(旧正月) | 退職告知期間(Notice Period) |
| 法的な位置づけ | 義務(一般の従業員が対象) | 任意(契約・規程に書けば義務) | 契約上の義務(法律ではなく雇用契約で決まる) |
| 金額の目安 | 年間基本給の1/12以上 | 基本給1ヶ月分前後が一般的 | — |
| 支払時期 | 12月24日まで | 旧正月(1〜2月)の前 | — |
| 業務委託の場合 | 法律の対象外(契約で決める) | 契約で決める | 契約で決める |
🇵🇭 フィリピン:13ヶ月給与は法律上の義務
大統領令851号により、一般の従業員(管理職を除く)には、毎年12月24日までに、その年に受け取った基本給の1/12以上を「13ヶ月給与」として払う義務があります。半額を年の途中(たとえば学校の新学期前)に払い、残りを12月に払うことも認められています。
- EORで雇用する場合は、13ヶ月給与が自動的にコストに入ります。月額で見ると基本給の約8.3%です。
- 業務委託には法律上の義務はありませんが、現地では年末の13ヶ月分を期待する人が多く、報酬の設計で配慮すると定着しやすくなります。
- 見積りは「基本給 × 13」で年間の総額を出し、12で割って月額に直すと分かりやすくなります。
🇻🇳 ベトナム:テト賞与は任意だが、実質的な期待がある
2019年労働法では、ボーナスの支給は会社の裁量です。テト賞与も13ヶ月給与も法定ではありません。ただし、労働契約・就業規則・公表した賞与規程に書くと、会社は一方的に取り消せなくなります。
義務ではなくても、払わないリスクは大きいテト(旧正月)前に基本給1ヶ月分前後を払うのが慣習で、多くの人が年収の一部として期待しています。払わない場合は、転職の動機になりやすい点に注意してください。
- 採用時に「テト賞与の有無・金額・支払条件(在籍など)」を明示する。
- 業績連動にする場合は、算定のルールを文書で示す。
- 年間の総額を示して、給与の月額が低く見えないようにする。
🇮🇳 インド:退職告知期間(Notice Period)が採用計画を左右する
インドのIT業界では、退職の意思を伝えてから実際に辞めるまでの期間(Notice Period)が、雇用契約で60〜90日と定められていることが一般的です。採用が決まっても、実際に参加できるのは2〜3カ月後になるのが通常です。
| 対策 | 内容 |
|---|---|
| 買い取り交渉(Buyout) | 前の会社に残る日数分の給与を、条件に含めて早期の退職を促す |
| 待機中の関係づくり | 週1回程度の面談、Slackへの招待で、入社までの辞退や引き抜き(カウンターオファー)を防ぐ |
| 選考のスピード | 応募からオファーまでを1〜2週間に抑え、熱量が冷めないようにする |
退職一時金(Gratuity)について勤続5年以上の従業員に支払う退職一時金です。EORを使う場合は月額約4.81%が積立として請求に含まれます。2025年11月施行の新労働法では、有期雇用の従業員も1年の勤務で比例的に受給資格が生じると定められました。
年間の人件費を組み立てる手順
- 月額の基本給を決める(国別の給与相場)
- 法定の義務(13ヶ月給与など)と、慣習として入れる賞与を分けて足す
- 雇い方(業務委託かEOR)で、法定福利費とEOR手数料を足す(採用・EOR月額費用の総額)
- 年間の総額を12で割り、月額の予算に落とし込む
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よくある質問
業務委託の相手にも13ヶ月給与を払う必要がありますか?
法律上の義務はありません。契約で決める事項です。ただし、現地では年末の追加報酬を期待されることが多いため、年間の報酬総額を設計するときに考慮してください。
テト賞与を払うと決めたあとで、取りやめることはできますか?
契約・規程などの文書で約束した後に、一方的に取りやめることは難しくなります。書面に残す前に、金額と条件を慎重に決めてください。
インドの人が辞退してしまうのはなぜですか?
前の会社で引き止めの条件(昇給など)を出されたり、待機中に他社から別のオファーを受けたりすることが多いためです。待機期間中も関係を保つことが大切です。
確認した情報源
- フィリピン: 大統領令851号(13ヶ月給与)、労働雇用省の指針
- ベトナム: 2019年労働法(ボーナスの規定)と各種公開資料
- インド: 雇用契約の一般的慣行(退職告知期間)、Payment of Gratuity Act, 1972、2025年11月施行の新労働法
最終確認日: 2026-10-07。法律・税率・為替は変わるため、契約や納税の前に現地の専門家または公的機関で再確認してください。